忍者ブログ
破片
hpの記録です。目標ばかりが増えていく……。
[622]  [621]  [620]  [619]  [618]  [617]  [616]  [615]  [614]  [613]  [612
2024-05-12 [Sun]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2009-11-24 [Tue]
不憫なクロスを書いてたら、うっかり不憫萌えに目覚めそうだったけど、読み直したら、単にクロスが馬鹿なだけでした。あーあ。

追記に隠しておきます。
もしかしたら、今後upするSSの冒頭になるかも知れないので、いつかまた全く同じのを見ても怒らないでね。 

ちなみにコレ、1度書いたのが消えて泣きました。最初のヤツの方が2割は文章上手だった!って、言うだけならタダだから言います。本当だって!

カップリング要素は皆無!
単にシーナが後輩?を虐めているだけ。





「何を話してきたんだ?」
突然の質問にも動揺せず、シーナはカップを持ち上げた。白い1人がけソファに白い彼。春のゆるやかな空気。珈琲だけが生き物のように色を持っていた。
「人のスケジュールを覗くのはよくない」
穏やかな表情で返す。父親が息子のたわいもない悪戯を見つけたときのような、優しい穏やかさだった。
「あの時の外出は、やはりそういうことか」
ソファに歩み寄りながらクロスが言い放つ。ソファのすぐ横に立つクロスを、シーナは急角度で見つめる。スーツ姿に黒い目、黒い髪、平凡な男だ。特別なところと言ったら、身長が少し高いのと、耳が少し尖っているところ。しかし、それもヴォタノロギノス民族の特徴でしかない。そんなありふれた男が、こんなことを言う。シーナは思わず笑みを零した。一人前のつもりなのだ。
「鎌をかけたのが成功したように振る舞って相手を動揺させ、口を軽くするのは、いい作戦だ」
シーナは変わらぬ柔和さで告げ、カップに口を付ける。ゆっくりと珈琲を飲む。そして口を離す。
「しかし、今、俺にその手を使うということは、お前は本当に未熟者で身の程知らずだ。お前が情報を得たという情報を俺は持っている。こんなことをしてくる事から判断すると、可哀想に、大したことを教えてもらえなかったんだろう?」
自分が使った策略が全く無意味だったどころか、己を痛めつけている。クロスは奥歯を噛み締めた。
「情報屋の前では、情報屋以外の全ての人間は素直であるべきだ。特に、情報屋未満の駆け出しは」
シーナは言ってから、スプーンでカップの中をかき混ぜた。シャラシャラと音がする。溶けきれていない砂糖がカップの底に沈殿しているのだ。
「腕を確かめに来たんだろう? 安心しろ、こちらも腕を試すつもりだった。授業料はいただいているから心配するな」
眉間に皺を寄せて立ちつくすクロスの横で、彼は平然としている。シーナが甘ったるい珈琲を一気に飲み干すと、琥珀色に輝く砂糖の粒子が見えた。小さく欠伸。その仕草が可愛らしいと感じる程、今の2人は平穏ではなかった。カップに残った砂糖をスプーンで掬って口に運んで
「いくら俺でも、砂糖を食べるのは辛い」
独りごちる。今までの会話を断ち切るそのぞんざいさが、お前は敗北者だと知らしめる。最初の穏やかさは、下の者、いや、軽率な人間を相手にする際の余裕だった。 
シーナは机の上に手を伸ばす。マカロンを取り上げると腰を上げ立ち上がり、
「機嫌を直せ」
クロスの唇に接近させる。親指と中指で摘んでいるだけなのに、その手の指はぞっとする程美しい。シーナが意地悪な微笑みを浮かべた。小首を傾げられて銀髪がさらりと揺れる。彼が女性なら小悪魔というやつだろう。クロスも意地悪く笑む。これは、単なる意地。
クロスは左腕を持ち上げてマカロンを取り、口に押し込む。
自分の機嫌も隠せないのか。
渇いた口の中で千切られながら、小さな焼き菓子は言っていた。




ヴォタノロギノスは、植物園のギリシャ語かラテン語をちょっと弄った感じです。かなりてきとー。だってクロスだし。名前の由来さえ忘れそうなクロスだし。綴りは多分kourosであってるはずなんだ。でも単純に十字のクロスでもいい。そんな今日この頃。
PR
COMMENT
Name
Title
Color
Mail
URL
Text
Pass   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
secret
TRACKBACK
TrackbackURL:
Copyright © 破片 All Rights Reserved.
PhotoMaterial by Kun  Template by Kaie
忍者ブログ [PR]