2010-10-26 [Tue]
行き詰まったし、文章力ないし、そんな書きかけが憎いので晒しちゃう。
むしゃくしゃしてやった。反省はしている。
意味がない。物語の冒頭風なのに続きがない。ただの文字のかたまり。
むしゃくしゃしてやった。反省はしている。
意味がない。物語の冒頭風なのに続きがない。ただの文字のかたまり。
歴史の浅いララにおいても、やはり王城となると重々しい造りになっている。靴が柔らかい絨毯を踏んでいるのは勿論、目の前のドアはララの周辺で育つ銘木の匂いがした。珍しい寒冷地の銘木。重そうだ。
王城内、貴賓室の1室。
ノックをすると女の声が聞こえた。女性の案内人が、そのドアをごく自然に押して開く。中に入っても絨毯の床であることを、クロスは確認した。視線を上げると、椅子にかけた金髪の若い男と、姿勢良く立つ妙齢の女性。礼儀に従って頭を下げる。
「無駄は好かない。話は聞いている」
男はそれに見向きもせずに言い放った。
「同郷らしいが、敬称は教授でいい。これは秘書のカミラ」
クロスは喉まで出ていた言葉を仕舞い込み、イエスを伝える。金色の猫毛や、瞳の翡翠色の柔らかい印象とは裏腹に、低く冴えた声だった。漆黒のスーツを台座にした金のラペルピンを、クロスは無意識に目視した。彼に染みついた文化がそうさせるのだ。それがどのようなものか、同郷の人間は全員知っている。クロスはもう1度丁寧に頭を垂れる。
「バシリウス=ロイ教授。この度は受賞おめでとうございます。授賞式と一連の記念講演において、警護と案内を担当致しますクロス=グレィヌと申します。この巡り合わせに祝福を」
ロイ家。──芸術と文化を司る貴族の家系。故郷で歴史に名を残した史家の多くはロイ家の出身であり、彼もまた、言語学者としてそこに名を連ねようとしている。
衣が擦れる、本当に微かな音が響く。クロスが頭を上げると、ロイがこちらに体を向け、そっと微笑んでいるところだった。実際にはシニカルにも見えたけれど、これが彼の微笑みなのは有名だ。
「ヴォタノロギノス民族の挨拶を、ララ・クレオル語で聞けるとは思わなかった」
クロスが考えるに、彼の笑みに抵抗を感じる理由は、ロイが人間をサンプルとして見る嫌いがあるからだ。そんな態度で微笑まれたら、違和感を感じても仕方ない。
その思考を、クロスは笑みで隠蔽した。人のことは言えない。
ロイが左の眉を上げて、クロスを促した。頷きで返す。
「話はお聞き遊ばしたそうなので、早速ですが明日の打ち合わせを。ある程度のことは私も聞いておりますので、特に教授からのご要望などはございませんか」
ロイはわざとらしく、目の動きだけで右上を見た。何故だか、妙に無邪気な仕草だった。少しそのまま思案して、
「君をなんと呼べばいい?」
言ったのは、結局これだけだった。クロスはにこやかに微笑んで、「好きにしろ」と丁寧に伝えて、退出した。
王城内、貴賓室の1室。
ノックをすると女の声が聞こえた。女性の案内人が、そのドアをごく自然に押して開く。中に入っても絨毯の床であることを、クロスは確認した。視線を上げると、椅子にかけた金髪の若い男と、姿勢良く立つ妙齢の女性。礼儀に従って頭を下げる。
「無駄は好かない。話は聞いている」
男はそれに見向きもせずに言い放った。
「同郷らしいが、敬称は教授でいい。これは秘書のカミラ」
クロスは喉まで出ていた言葉を仕舞い込み、イエスを伝える。金色の猫毛や、瞳の翡翠色の柔らかい印象とは裏腹に、低く冴えた声だった。漆黒のスーツを台座にした金のラペルピンを、クロスは無意識に目視した。彼に染みついた文化がそうさせるのだ。それがどのようなものか、同郷の人間は全員知っている。クロスはもう1度丁寧に頭を垂れる。
「バシリウス=ロイ教授。この度は受賞おめでとうございます。授賞式と一連の記念講演において、警護と案内を担当致しますクロス=グレィヌと申します。この巡り合わせに祝福を」
ロイ家。──芸術と文化を司る貴族の家系。故郷で歴史に名を残した史家の多くはロイ家の出身であり、彼もまた、言語学者としてそこに名を連ねようとしている。
衣が擦れる、本当に微かな音が響く。クロスが頭を上げると、ロイがこちらに体を向け、そっと微笑んでいるところだった。実際にはシニカルにも見えたけれど、これが彼の微笑みなのは有名だ。
「ヴォタノロギノス民族の挨拶を、ララ・クレオル語で聞けるとは思わなかった」
クロスが考えるに、彼の笑みに抵抗を感じる理由は、ロイが人間をサンプルとして見る嫌いがあるからだ。そんな態度で微笑まれたら、違和感を感じても仕方ない。
その思考を、クロスは笑みで隠蔽した。人のことは言えない。
ロイが左の眉を上げて、クロスを促した。頷きで返す。
「話はお聞き遊ばしたそうなので、早速ですが明日の打ち合わせを。ある程度のことは私も聞いておりますので、特に教授からのご要望などはございませんか」
ロイはわざとらしく、目の動きだけで右上を見た。何故だか、妙に無邪気な仕草だった。少しそのまま思案して、
「君をなんと呼べばいい?」
言ったのは、結局これだけだった。クロスはにこやかに微笑んで、「好きにしろ」と丁寧に伝えて、退出した。
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